ご存じですか?ライ症候群

ライ症候群は、インフルエンザや水痘などのウイルス感染後、アスピリンなどを服用している小児等に起こる、肝臓の脂肪沈着を伴う重篤な急性脳症のことです。成人のライ症候群は非常に稀で、かつ発病後2週間程度でほぼ完全に回復します。

通常、インフルエンザや水痘などのウイルス感染発症3~5日後に、混乱、けいれん、意識障害などの症状を認めます。血糖値は低下する一方、血中アンモニアは上昇します。同時に肝臓は脂肪沈着をきたし腫大し、脳浮腫が起こり、けいれん、意識障害を引き起こします。

正確な原因は不明ですが、脂肪酸代謝異常を有する小児のウイルス感染の治療にアスピリンを用いることで引き起こされると考えられています。予後は意識障害の程度や全身状態によりますが、生存患者の多くに様々な程度の永続的な脳障害の後遺症を認めます。一方、適切な診断治療がなされないと死に至ることも稀ではありません。

イギリスでは小児へのアスピリン使用に対する警告を行い、アスピリン使用薬品に警告ラベルを導入したところ、ライ症候群の発生率減少が認められました。英米では、19歳以下のインフルエンザや水痘罹患者には症状緩和目的にアスピリンを使用することは避けるべきと考えられています。インフルエンザや水痘感染による発熱疼痛に対しては、アセトアミノフェンやイブプロフェンが安全であるとされています。

我が国では解熱鎮痛剤の使用について、15歳未満のインフルエンザ、水痘の患者には原則として以下を投与しないとして、

  • サリチル酸系
  • ジクロフェナクナトリウム

また、小児のインフルエンザに伴う発熱に対して基本的に投与しないとして

  • メフェナム酸

を挙げています(http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/iencepha.html)。

 

さて、ここからが本題です。医療機関から処方されて、何故か余った医薬品を大切に保管されている方をお見受けしますが、発熱したからといって、そのような解熱鎮痛剤を安易に使われませんようにご注意ください。サリチル酸系には、アスピリン、バファリン、PL顆粒などが、ジクロフェナクナトリウムには、ボルタレンなどが、メフェナム酸には、ポンタールなどが含まれます。最近はジェネリック医薬品もあるので名前が違うからといって安心はできません。気軽に使った解熱鎮痛剤でインフルエンザ脳症が起きてしまうとも限らないので、必ず医療機関を受診し、処方された医薬品のみを使うようにしていただければと思います。

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