低線量CTによる肺がんCT検診

企業健診は、企業が従業員等に年1回程度提供する健康診断で、多くの場合その内容は、問診、診察、身体計測、視力測定、胸部エックス線、心電図、尿検査、血液検査、胃バリウム検査、便潜血検査といったところです。胃バリウム検査は胃がん食道がんの、そして便潜血検査は大腸がんの早期発見目的に行われているわけですが、最近では、胃バリウム検査に代えて胃内視鏡検査を導入したり、大腸がん検診に大腸内視鏡検査を導入している企業健診もみかけます。同様に肺がんの早期発見目的に行われてきた胸部エックス線検査に代えて胸部CT検査を導入している場合も見受けられます。さて、企業健診は、原則として健康な(あるいは、健康に見える)従業員等を対象としていますので、健診によってもたらされる不利益は最小限度に抑えることが求められます。企業サイドが好意から肺がん検診として胸部CT検査を提供している場合でも、注意しておくことがあります。それは、その胸部CT検査は、低線量CTか、どうかということです。国立がん研究センターのがん情報サービスの肺がん検診のインターネットサイトでは、「・・・非低線量CTは、被曝の面から健常者への検診として用いるべきではありません。」とさえ記載されています。皆さんが、肺がん検診目的に胸部CT検査を受けられる場合は、是非、低線量CTなのかどうかをご確認ください。一般に、低線量CTと明記されていない胸部CT検査は通常線量である場合がほとんどです。尚、低線量胸部CT検査が早期肺がん検出と肺がん死亡減少において有効であるということについては、こちらをご覧ください。

低線量CT検査であることを確認すれば、それで十分かというと、そうでもありません。低線量CT検査による画質は、通常線量による画質に比較して ” 粗い ” 画質 となりますので、その読影には一定程度の習熟を要します。従って、低線量CT検査であれば、どこで受診しても同じであるということにはなりません。つまり、画像を誰が読影しているのかが重要になってきます。現在、我が国の低線量胸部CT検査による肺がん検診において、読影者の質を担保する体制として、特定非営利活動法人 肺がんCT検診認定機構による認定制度が存在します。低線量CT検査であることを確認し、更に、肺がんCT検診認定機構の認定医が読影していることを確認していただければと思います。企業健診では料金も企業による全額助成から一定程度の助成が受けられますが、個人的に受診される人間ドックのような場合の胸部CT検査による肺がん検診では、料金も高額となりますので、是非、低線量CTであること、肺がんCT検診認定機構の認定医による読影であることを、ご確認ください。

さて、肺がんが喫煙と関係が深いことは皆さんご存じかと思いますが、喫煙と関係が深い肺疾患として肺気腫(COPD、慢性閉塞性肺疾患)もあります。肺気腫は進行性の疾患で、最終的には呼吸苦にて在宅酸素療法が必要になることも多く、根治治療法が現時点では存在しない、厄介な病気なわけです。肺気腫を早期に診断するには、肺機能検査を実施する必要がありますが、企業健診で肺機能検査を実施するのは稀です。実は、進行期はもちろんですが、早期の肺気腫を低線量胸部CT検査によって検出することが可能です。肺気腫を早期に検出する利点は、喫煙者であれば強力な禁煙動機になること、運動療法など早期から呼吸リハビリを導入できること、気管支拡張薬などの吸入療法等を適切な時期に導入できること、などが挙げられます。つまり、肺がん検診として低線量胸部CT検査を行う利点として、肺がんを早期に発見しうることに加えて、肺気腫を早期に発見しうることも挙げられるのです。もし、皆さんが、低線量CTを用いた肺がんCT検診を受診された場合は、是非、肺気腫の有無、程度についても情報を得るようにされると良いでしょう。

メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)、いわゆるメタボですが、これは、内臓脂肪の蓄積によって心疾患発症の危険度(動脈硬化の程度)が増加するという疾患概念を指し、腹囲(へそ回り)が男性85cm以上、女性90cm以上で、かつ高血圧、脂質異常、高血糖の2項目以上が該当する場合にメタボリック・シンドロームと認定されます。さて、喫煙は、メタボリック・シンドローム同様に、動脈硬化と密接な関係を有しています。つまり、メタボリック・シンドロームの喫煙者は、動脈硬化がさらに進行することで、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞の危険度が高くなるわけです。内臓脂肪の測定には簡便な腹囲の計測が一般的ですが、実はCTによって内臓脂肪量を正確に測定することが可能です。特に喫煙者の方は、肺がんや肺気腫を気に掛けるにとどまらず、是非内臓脂肪量も気にかけていただければと思います。もちろん、禁煙することが重要であることも、論を待たないわけです。

当クリニックでも、低線量胸部CTドックを行っておりますので、ご興味のある方はメール(info@murasakiyamapark-clinic.com)かお電話(022-343-6231)にて是非お問合せください。企業健診としても対応可能ですので、ご関心いただけるようであればご連絡ください。

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